今回は、不眠とマインドフルネスというテーマでお話しします。
「マインドフルネス瞑想で不眠が改善する」という医学的な研究結果は、いくつかあります。
また実際に、「マインドフルネスで不眠が改善した」という人を、私は個人的に何人か知っています。
おそらく、マインドフルネスが不眠に効果的だというのは、間違いないでしょう。
なぜ効果があるのでしょうか?
この記事では、その理由を大きく3つに分けて、分析してみます。
理由①:思考が静まる
皆さんも経験あると思いますが、寝ようとして布団に入ると、考え事が始まってしまうことがあります。
過去のことを思い出したり、明日の予定について考えたり、なにか気になることを考え始めたり。
そして、その考え事が頭の中でグルグルと続いて、なかなか終わらない。
考え事がどんどんヒートアップしていき、ぜんぜん眠くならない。
これはよくある不眠のパターンです。
これを解消するには、思考を静める必要があります。
思考がグルグル続いてしまうと、なかなか眠れませんが、思考が静かになれば眠りやすくなります。
マインドフルネスをやっていると、思考が静まりやすくなります。
完全に止められるわけではないですが、圧倒的に静まりやすくなります。
どうやるかというと、
思考が出てきても、その思考にとわれれず軽く受け流して、呼吸の感覚や身体感覚に意識を向けていきます。
それを繰り返していると、だんだんと思考が静かになっていきます。
無理やり止めるというよりは、出てくるのは仕方ないとして、出てきたら受け流して手放す
という感じです。
思考を静かにできるようになれば、眠りやすくなるでしょう。
理由②:強迫観念・あせりにとらわれない
夜眠れないと、
「早く寝ないといけない!」
という強迫観念、あせりが出てきます。
そうなると、ますます眠れなくなります。
眠らなきゃと思うとますます眠れなくなる
というヤツです。
これはよくあるケースですね。
私たちは、「眠らなきゃいけない!」という思いに限らず、こういった「〇〇しないといけない!」という思いにとらわれやすいです。
私たち現代人は、大量の情報にさらされ、
「〇〇しないといけない!」
「〇〇すべきだ!」
というプレッシャーをいつも受けています。
常にやるべき事があり、目的があり、そこに向かって努力し行動する
というのが当たり前になっています。
そういう生活を続けていると、
何もしないでのんびりする、目的を持たずに過ごす
ということがなかなかできなくなってきます。
たとえ休みの日で、とくに予定がなかったとしても、何かしら目的を作り、そこに向かって行動していないと落ち着かない
という人はけっこう多いです。
目的というのは、必ず未来に設定されます。
目的に向かって行動するということは、未来に向かって今の状況を変えようとするということです。
ある意味、現状を否定しているといえます。
目的を持つこと自体は問題ないのですが、それが当たり前になりすぎると、
目的がないと落ち着かない
目的がないと苦しい
となってしまうことがあります。
現状をただ認め、そのまま何もせずにいる
ということができなくなります。
「現状をただ認める」ができないとどうなるか。
今回のケースだと、眠れない時に「眠れなくてもいいや」とあきらめることができなくなります。
どうしても眠れない日でも、
眠らなきゃ、眠らなきゃ、眠らなきゃ!
とあせり、よけい眠れなくなります。
もし、眠れないことをあきらめ、
「眠れないなら眠れなくてもいいや、仕方ない」
と思えれば、プレッシャーが減り、かえって眠りやすくなります。
マインドフルネスは、現状を認める力を鍛えるトレーニングでもあります。
マインドフルネスでは、10分~20分静かに座って、今ココに意識を向け、呼吸や身体感覚を感じます。
それは、未来の目的に向かう行為ではありません。
今の現状をただ感じ、認める行為です。
ジタバタしない練習、あきらめる練習、ともいえます。
座っている間、落ち着かなくても、退屈でも、ネガティブな思考がどんどん湧いてきても、用事を思い出しても、なにもせずそのままただ座っている。
それは、ただ今の現状に抵抗せず、そのまま受け入れる練習です。
「今のままでいいんだ」となるトレーニングなんです。
それができれば、眠れない時に「眠らなきゃ!」というプレッシャーを受け流せるようになります。
そうなれば、眠りやすくなるでしょう。
理由③:交感神経が落ち着くから
交感神経の活動が活発になると、興奮して目が覚め、眠りにくくなります。
スマホやPC画面を見るなど、デジタル機器にふれていると、交感神経が活発になることが知られています。
スマホやPCでなくても、刺激の強い情報、例えば人の噂話やスキャンダル情報、アップテンポな音楽などにふれても、交感神経は活発になります。
なので、夜遅くなったらスマホやPCを見ずに、刺激の強い情報は避け、静かに過ごした方が眠りやすいといわれます。
しかし、なかなかそれができなかったりします。
スマホやPC、刺激の強い情報は、人を強くひきつけるため、ついつい引っ張られて見てしまい、没頭してしまいます。
それで意識が覚醒してしまい、眠りにくくなります。
マインドフルネスのトレーニングを積むと、そういった刺激の強いものへの欲求を、コントロールしやすくなります。
刺激の強い情報だけでなく、食べ過ぎ飲み過ぎを防ぐなど、自分の欲求をコントロールしやすくなります。
なぜそれができるかというと、自分の欲求を観察できるようになるからです。
マインドフルネスは、自分の思考や感情を観察する力をアップさせます。
すると、自分の欲求を観察できるようになり、その欲求に振り回されにくくなるのです。
それができれば、交感神経を活発にさせないよう自制することもできるようになり、眠りやすくなるはずです。
さて、マインドフルネスが不眠に効く理由を、大きく3つ説明してきました。
どの理由にも共通しているのは物事にとらわれない力です。
頭の中の思考や強迫観念、欲求にとらわれにくくなることで、興奮を避け、落ち着きが増します。
それが眠りやすさにつながります。
また、根本的な生きやすさにもつながります。
マインドフルネスの本質的な効果といえるでしょう。