マインドフルネス瞑想は、日本では2012年ごろから紹介され始めたので、新しいモノというイメージがありますが、実はとても長い歴史を持っています。
マインドフルネスは、もともとは仏教の瞑想法です。
仏教は、今から約2500年前のインドで始まりました。
その後、タイやミャンマー、ベトナムなどの東南アジアの国々や、中国や日本、チベットなどの国々で、長い間続いてきました。
そして時代は進み、1960年代のアメリカのこと。
その頃のアメリカは、ベトナム戦争の真っ最中でした。
いつまでも終わらない戦争に、アメリカでは反戦運動が盛んになっていました。
その流れの中で、西欧文明至上主義への批判が起き、東洋の伝統への関心が高まっていました。
そういった新しい文化的な流れが、起きていたのです。
その中で、仏教への関心も高まっていきました。
何人もの熱心なアメリカ人が仏教国に渡り、直接現地で仏教瞑想を学び、アメリカに持ち帰りました。
また、東南アジアやチベット、日本の禅のお坊さん達が何人もアメリカに渡り、仏教の教えと瞑想を広めていきました。
アメリカに渡ったお坊さん達によって、英語の仏教書もたくさん書かれ、当時の知識人達は好んで仏教書を読み、瞑想をしました。
そうやって仏教の教えと瞑想が、アメリカに広まっていきました。
その頃から、マインドフルネスという言葉が使われるようになりました。
マインドフルネスという言葉は、特定の瞑想法を指しているというより、アメリカの仏教瞑想の総称的な意味で使われています。
または、仏教瞑想で育てていく「精神状態」を指して使われることもあります。
アメリカに禅を広めた、禅僧の鈴木俊隆老師の著作「禅マインド・ビギナーズマインド」にも、マインドフルネスという言葉が使われています。
ベトナムの禅僧ティク・ナット・ハン師の著作や、チベット仏教僧のチョギャム・トゥルンパ師の著作など、本場の仏教指導者の多くの著作にも、マインドフルネスという言葉が使われています。
さらに、マインドフルネスの歴史にとって重要なプログラムが、1979年に始まりました。
マサチューセッツ大学医学部のジョン・カバット・ジン教授が、医療用のマインドフルネスプログラムを開発し、成果をあげたのです。
教授は、長い間仏教の瞑想に取り組んでいて、その効果を実感しており、医療に応用できるのではないか、と考えたのです。
東洋の神秘だった瞑想が、正式な医療用プログラムへ応用され、科学者達がその効果を科学的に検証するようになりました。
医学者や心理学者、脳科学者などがマインドフルネスの研究を行い、科学的にその効果が示されていきました。
その後、2000年代には、グーグルやアップルなどのシリコンバレーの企業が、社員のストレス低減や能力アップのために、マインドフルネスを研修に取り入れ、効果を上げました。
あのグーグルやアップルが、マインドフルネスを取り入れている!
ということから、一部の瞑想マニアだけでなく、一般の人々にもマインドフルネスが広まっていきました。
そして、2012年頃から、日本にもマインドフルネスが紹介されるようになりました。
もともとマインドフルネスには、日本の禅も取り込まれています。
日本にとっては、1960年代にアメリカに伝わった禅が、数十年たってから逆輸入されたような形になっています。
なんだか面白いですね。
アメリカ人のマインドフルネスの先生が言うには、やはり日本人の方が、アメリカ人よりマインドフルネスの才能は、確実にあるらしいですよ。
日本人には、仏教や茶道・華道など、文化的な下地があるかららしいです。
派手さのない地味なモノから、美しさをしみじみと感じる感性や、効率よりも丁寧さ、美しい立ち振る舞いを重視する感性などは、マインドフルネスに通じるんです。
日本人の心のベースには、マインドフルネスがあるんですね。